関係性の希薄な社会で

 一般社団法人FR教育福祉会では、FRの設立理念と同じ志を持つ団体とともに、各種研修の一貫として、テーマ別の共同学習会や意見交換会を定期的に開催している。今回は不定期会合の扱いではあるが、「リーガルマインドー制度と契約ー」という演題で、事務手続きに関する意見交換会を中心に開催した。参加団体が広域であったため、関係者の中間に位置するFR本部で行われた。参加団体は東京都にある生活介護、県央に事業所を展開する就B、市内の就B、又市内の相談系の施設など各立場による複数関係者、県外自治体も含めて5つの団体が意見交換会を開催した。

 ちなみに次回定例会は、来月の講演会の後、共同学習会を開催する運びとなっている。内容については後日、当ブログでアップするのでご期待ください。

 話は戻って、今回のテーマは、各事業所においても共通する内容であるので、かなり現実的で、シビアで闊達な意見が上がった。今回は、普段の「直接支援とは全く関係のないテーマ」で、法律や規則に基づく事務手続きに関する各事業所における対応について、複数の視点で捉えて、浮かびあがった問題点などを元に議論し、一般的事例をもとに詳細な検討が行われた。要約すればリーガルマインドは空気や水のように私たち社会に欠かせない正義の剣であるということだ。そこで会合に集まった事業者において、書面は重要であるということを再認識した。だが代償として書類の洪水に直面するという状態は避けられない。いろんな部署を監督する立場の上位機関は、さぞかしご苦労が多いことか、電子書類化が進んでいるであろう昨今、紙面処理は少なくなっているだろうけど、すべて電子化はできないだろうし、そうなると置き場所もとる。とくに行政機関などでは、私たちの扱う書類の量の比ではないだろう。各方面で不始末も多い昨今、紙では書類の洪水になるはずで、その管理をおもうと、「ご苦労様です、ありがとうございます」としか言いようがない。ともあれ、他の各事業者においても不合理、制度の限界や狭間で色々な問題に直面しているようだ。私自身、教育学を軸に、人文社会科学分野の横断的な研究者でもあるが、所属学会の研究発表で問題提起してもいい内容も多かった。

 閑話休題、お堅い話を離れ、最近、気になっている音楽の話。80年代を代表するギタリストであるエディーヴァンへイレンが亡くなってしまったが、いまだメンバーが健在で、70年代の音楽シーンで活躍したバンドに「The Feces」という英国のロックバンドがある。とにかくメンバーが豪華である。ヴォーカリストはロッドスチュアート、そして後に「ローリングストーンズ」のギタリストになるロンウッド、さらに「The who」のドラマーになるケニージョーンズとビックネームばかりである。だがその中に蒼々たる顔ぶれのなかで短期間ではあるが、唯一の東洋人である日本人のベーシストの山内テツがいる。山内テツは、ローリングストーンズのキースリチャーズを交えたステージで、チャックベリーの名曲「sweet little rock‘n’roller」の演奏もしている。世界で活躍している日本人は多いが、音楽シーンであまり話題にはならない。しかし50年近くも前、世界の音楽ヒーローたちの中で、活躍していたミュージシャンがいたこと、CDのジャケットをみると、ロッドやロンとテツがふざけあっている写真があったりして、なんとなく誇らしい思いがしたのであった。西洋社会において日本人は「名誉白人」であるという称号がある。もっともこの時代のルールからみれば、それ自体、「差別的な表現」である気がするが、ともあれ「臥薪嘗胆」、「イエロペリル」、「黄禍論」などの歴史用語を振り返れば、いつの時代も白人より下に位置するそんな有色人種の位置づけのなかで、3人がふざけあっている姿をみると、同じ人種でも関係性の希薄な社会で、そんな「称号」は、結局は単なる薄っぺらい記号に過ぎず、本質を示すには安っぽく言葉にすれば陳腐なものであるとに気づかされる。もっといえば、相手のことを尊重し、人権意識に富んだように表現であるかのように錯覚するが、人と人の個人的な関係性の表層を機械的にオートマチックに象徴する言葉であるとさえいえよう。言葉だけが立派で独り歩きすれば「名誉」とあるのだからと、なんとなく説得的に聞こえても、本質的には分けている時点で、とてつもない距離がある。人と人との関係性は、常識、慣習、人種などで、カテゴライズすることはできない。人と人それは本来、言葉では表現できないような感覚、計り知れない関係性の豊かさがあるのだろうとおもっている。(おわり)


2020年10月17日